幼馴染への三度目の失恋を回避したい ――激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。【完結】



「次、お願いします!」

 軽音部のスタッフから声がかかり、僕たちはステージへと出ていく。

 マイクの位置を調整し、MCの紹介を聞きながら、小さく「ふうっ」と深呼吸をした。


 嶋がスティックでカウントを取る。

 嶋自身が刻むハイハットの軽やかなリズムから、一曲目のハッピーなラブソングが始まった。

「キーボードは初めて」と言って目を輝かせていた由利さんの弾むような音が、メロディを楽しく包み込んで導いてくれる。

 観客もステージに向かって身体を弾ませ、一緒に歌いながら盛り上がってくれていた。

 サビの締めくくりでは、嶋がドラムでリズムを刻み続けながら、僕の声にハモリを重ねてくれる。
 歌っている僕自身も、思い切り音楽を楽しんでいた。

 めぐみも、笑ってくれているだろうか?
 今、どのくらい僕のことを想ってくれてる?

 一曲目が終わり、ステージの明かりが少し落ちる。
 由利さんがキーボードの前から、グランドピアノへと移動した。

 彼女の準備ができたことをしっかりと確認し、微笑みながら頷いた嶋が、再度スティックを鳴らして二曲目の合図をする。

 二曲目は、大好きな恋人への想いをゆったりとしたリズムに乗せて歌うバラードだ。

 曲を選ぶとき、嶋に『私的な選択ではないか!?』と指摘された。
 ごめんなさい、その通りです。
 決め手は、この曲の歌詞を見たとき、それが僕の今の気持ちそのものだったからだ。
 でも、想いを込められるほうがいい演奏になるわけだし、と僕は開き直っている。

 バラードだけど、とてもあたたかい曲なので、みんな心地よさそうに身体を揺らしながら口ずさんでくれている。


 歌い終えると、体育館いっぱいに響き渡る大きな拍手が湧き起こった。

 僕やバンドメンバーの名前を呼んでくれる友達の声も、たくさん聞こえてくる。

 ゆっくりと明かりが戻ったとき。

 視線の先、直線上の場所。
 両手を頭の上に高く持ち上げて、一生懸命に拍手をしてくれている、大好きな笑顔が見えた。

 僕は、彼女にしかわからないような、小さな微笑みを投げかけた。
< 112 / 121 >

この作品をシェア

pagetop