幼馴染への三度目の失恋を回避したい ――激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。【完結】
 ◇

 暗くなり始めた初夏の帰り道を、しっかりと指を絡めて歩く。

「あー、さっきのライブで、またなっちゃんフィーバーがきたらやだなあ……」

 めぐみが不満げにぽつりと呟いた。

(……可愛い)

 内心悶えながらも、僕は平然と返す。

「いや、さすがにないでしょ。これだけオープンに付き合ってるんだから」

「えー、そうかなあ」

 めぐみはまだ納得していない様子だ。
 そしてハッと顔を上げて、焦ったように聞いてきた。

「明日のクラスの打ち上げって、カラオケではないよね!?」

「違うよ。ファミレス」

 それを聞いためぐみは「は〜よかったあ」と大袈裟に胸をなでおろした。


 少しの間、二人の足音だけが響く静かな時間が流れる。

「……ねえ、なっちゃん」

 めぐみが、繋いだ手を少し揺らした。

「今回の二曲……なっちゃんが選んだの?」

 横目で僕を見ながら尋ねてくる。

「嶋たちが絞ったリストの中から、俺が『これがいい』って言ったよ」

 僕の答えに、めぐみは「……ふうん。そうなんだ」と前を見つめながら、とても嬉しそうに微笑んでいた。

 その横顔を、じっと見つめる。

 二曲目のバラードの歌詞。
『この先もずっと 君の世界にいさせて』

 完全に私情で選んだ曲。
 そのメッセージは、ちゃんと彼女に届いていたらしい。

「……なに!?」

 僕の熱い視線に気づいためぐみがこっちを向き、照れ隠しなのか腕にギュッとしがみついてきた。

「……なんでもない」

 僕は幸せを噛み締めながら笑った。

 暑い夜風の中、二人でじゃれ合いながら、マンションへの帰り道を歩いていくのだった。
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