幼馴染への三度目の失恋を回避したい ――激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。

第20話

 文化祭の直後には、期末テストが控えている。
 少しでも勉強しておこうと机に向かったものの、どうにも身に入らなかった。

 持っていたシャーペンをノートの上に放り出し、僕はそっとスマホを手に取った。

 さっき通学路で撮ったばかりのめぐみの写真を開く。
 鮮やかな夕焼けの中で、やや照れたような表情を浮かべながら、レンズ越しの僕を見ている顔。

 スワイプして、カメラロールを少し遡る。

 今度は、中等部の卒業式、誰もいない教室で撮ったツーショットを開いた。
 めぐみとの距離に緊張して懸命に真顔をつくる僕の横で、めぐみは一切屈託のない笑顔を弾かせている。

 二つの写真を見比べ「はあ……」と息を吐き出した。

 他の人から見たら、「これで?」って思われるレベルかもしれないけれど。
 僕のこの、ひたすらに一方通行だった片思いの歴史の中で言えば、これは間違いなく、今が最も「いい感じ」の時期なのではないか――?

 だって、めぐみはいつだって、僕に対しては「ただの幼馴染」に対する無防備さや無邪気さしか持ち合わせていなかった。
 最近のように、僕の言葉で少し照れたり、はにかんだりして見せるなんていうことは、僕からすれば一気に百歩くらい前進したような、とんでもない進歩に感じられた。

 ただ、ここで難しいのが今後の立ち回りだ。
 このまま自然に接していれば、もっと前進していけるのだろうか。
 それとも、今が最高のチャンスで、ここで踏み込まないと、後になって『あの時、このタイミングを逃さなきゃよかった』と激しく後悔することになるのだろうか。

 その見極めが、ひたすらめぐみしか見えなかったせいで恋愛偏差値がゼロである僕には、絶望的に難しかった。

(……いや、待てよ)

 ベッドに寝転がり、天井の壁紙を睨みつけながら思考を巡らせる。

 焦るのは禁物だ。
 まずは、来週に迫った文化祭のステージ。それをきっちり成功させて、めぐみからの好感度を確実に上げることに最善を尽くそう。
 考え抜いた結果、その極めて真っ当な結論に至った。

 そうと決まれば、少しでも歌の完成度を上げなければ。
 制服を脱ぎ捨て、風呂場へと向かった。

 湿気のこもった浴室で、熱いシャワーを頭から浴びながら、タイルの壁に向かって発声練習をしていた、そのとき。

「うるさい! 近所迷惑でしょうが!」

 脱衣所のドアの向こうから、母さんのお叱りの声が飛んできた。
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