幼馴染への三度目の失恋を回避したい ――激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。
 ◇

 ――キーンコーン、カーンコーン。

 チャイムが鳴り、授業が始まった。

 ノートにペンを走らせるふりをしながら、斜め前方、黒板へ視線を向けるめぐみの背中をじっと見る。

 打ち上げのとき、非常階段で。
 僕の想いを受けてキャパオーバーになり、赤く染まった顔をコップで隠していた。

『めぐの頭がクールダウンできるまでは、待つから』

 たしかに僕はそう言って、余裕を装い、一旦は引き下がった。

 ――引き下がったけれど。

(……一体お前のクールダウンは、いつまでかかるんだよ!)

 心の中で、強めのツッコミを入れる。

『待つ』とは言ったが、さすがに長すぎる。
 あれからもう、二週間以上が経った。
 その間に僕は、他の女の子に告白されたりしているんだぞ?
 しかも、四人にもだ!

 ……いや、待てよ?

 あのとき手を握り返してくれたのは、文化祭の熱で盛り上がっていただけで、めぐみの気持ちが『別の意味』でクールダウンしたわけではないよな……?

 いつものネガティブ思考が顔を出し始める。

『冷静になって考えてみたら、やっぱりなっちゃんは幼馴染だし、付き合うとかはないわー』……と。
 あの熱気から、完全に冷めてしまったのではないか。

 真っ赤になっていたのは、ただ単に、急に好意を向けられ戸惑っただけだったのではないか。


(………………)

 窓の外に見える空はすっかり青く澄み渡り、本格的な真夏の色。
 蝉たちが、ジージーとうるさいほどに鳴き乱れている。

 そんな茹だるような暑さとは対照的に、最悪の可能性に行き着いた僕の心は、冷や汗をかいて凍りついていくのだった。
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