幼馴染への三度目の失恋を回避したい ――激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。
◇
家の時計を見ると、時刻は十九時を指していた。
最終下校時刻から、もう一時間は経っている。
僕は部活を終えてからまっすぐ帰ってきて、夕食を済ませ、なんなら体育館で汗だくになったことが気になり、シャワーまで済ませてしまったというのに。
まだめぐみからの連絡はなく、玄関のインターホンも鳴らない。
部活動は、特別な事情がある時に申請すると一時間延長できると聞いたことがある。それなんだろうか……。
スマホの真っ暗な画面を睨みつけながら、ソワソワとリビングを行ったり来たりしていた。
◇
そのさらに一時間後。
しびれを切らした僕は、めぐみの家のドアの前に立っていた。
――ピーンポーン……。
インターホン越しの返事はないまま、ガチャリとドアが開き、まさかの人物が顔を出した。
「おお。なっちゃんか」
すごく久しぶりに会う、めぐみのお父さんだった。
「……あっ……お久しぶりです」
めぐみのお父さんは動物病院の院長を務めているため、いつも帰りが遅い。
この時間に家にいるのを見るのは初めてだった。
「今日は病院が落ち着いててね、久しぶりに早めに帰ってきたんだ。なっちゃん、すっかり大人っぽくなってて、一瞬誰かわからなかったよ」
「はは。そうですか……?」
スローテンポで穏やかな話し声を聞きながら、玄関のたたきにスッと目をやった。
そこには、見慣れたローファーがきちんと並べられていた。
(……なんだよ。帰ってきてるじゃん)
「めぐみかい?」
そう尋ねられ、ハッとして「あっ、はい」と頷いた。
「今日、ちょっと……用事があって」
彼女のお父さんに向かって、今日の約束について何と言えばいいか少し焦ったが、咄嗟に出てきた『用事』というワードチョイスはグッジョブだった。
「呼んでくるね」
お父さんが廊下の奥へと消えていったので、僕は玄関のドアを一旦閉めて、外で待機した。
(……めぐ、いたのか)
扉の前で「ふーっ」と長く息を吐き出し、乱れる心拍数を落ち着かせる。
少しして、ドアの向こうから声が聞こえてきた。
お父さんに「コンビニ行ってくるけど、何かいるー?」と尋ねるめぐみと、「うーん、じゃあアイス」というお父さんの返事だった。
キイッ、とドアが開き、めぐみが顔を覗かせた。
大きめの白いTシャツに、オレンジ色のロングスカートというラフな部屋着の格好になっている。
「……ごめんね。遅くなって」
めぐみはそう言いながら、ゆっくりと外に出る。
やはり朝と同じように少しテンションが低い気がした。
ドアがパタン、と閉まる。
「少し……散歩する?」
虫の鳴き声が響く、街灯に照らされた真夏の夜の空気の中へ、めぐみを連れ出した。
家の時計を見ると、時刻は十九時を指していた。
最終下校時刻から、もう一時間は経っている。
僕は部活を終えてからまっすぐ帰ってきて、夕食を済ませ、なんなら体育館で汗だくになったことが気になり、シャワーまで済ませてしまったというのに。
まだめぐみからの連絡はなく、玄関のインターホンも鳴らない。
部活動は、特別な事情がある時に申請すると一時間延長できると聞いたことがある。それなんだろうか……。
スマホの真っ暗な画面を睨みつけながら、ソワソワとリビングを行ったり来たりしていた。
◇
そのさらに一時間後。
しびれを切らした僕は、めぐみの家のドアの前に立っていた。
――ピーンポーン……。
インターホン越しの返事はないまま、ガチャリとドアが開き、まさかの人物が顔を出した。
「おお。なっちゃんか」
すごく久しぶりに会う、めぐみのお父さんだった。
「……あっ……お久しぶりです」
めぐみのお父さんは動物病院の院長を務めているため、いつも帰りが遅い。
この時間に家にいるのを見るのは初めてだった。
「今日は病院が落ち着いててね、久しぶりに早めに帰ってきたんだ。なっちゃん、すっかり大人っぽくなってて、一瞬誰かわからなかったよ」
「はは。そうですか……?」
スローテンポで穏やかな話し声を聞きながら、玄関のたたきにスッと目をやった。
そこには、見慣れたローファーがきちんと並べられていた。
(……なんだよ。帰ってきてるじゃん)
「めぐみかい?」
そう尋ねられ、ハッとして「あっ、はい」と頷いた。
「今日、ちょっと……用事があって」
彼女のお父さんに向かって、今日の約束について何と言えばいいか少し焦ったが、咄嗟に出てきた『用事』というワードチョイスはグッジョブだった。
「呼んでくるね」
お父さんが廊下の奥へと消えていったので、僕は玄関のドアを一旦閉めて、外で待機した。
(……めぐ、いたのか)
扉の前で「ふーっ」と長く息を吐き出し、乱れる心拍数を落ち着かせる。
少しして、ドアの向こうから声が聞こえてきた。
お父さんに「コンビニ行ってくるけど、何かいるー?」と尋ねるめぐみと、「うーん、じゃあアイス」というお父さんの返事だった。
キイッ、とドアが開き、めぐみが顔を覗かせた。
大きめの白いTシャツに、オレンジ色のロングスカートというラフな部屋着の格好になっている。
「……ごめんね。遅くなって」
めぐみはそう言いながら、ゆっくりと外に出る。
やはり朝と同じように少しテンションが低い気がした。
ドアがパタン、と閉まる。
「少し……散歩する?」
虫の鳴き声が響く、街灯に照らされた真夏の夜の空気の中へ、めぐみを連れ出した。