幼馴染への三度目の失恋を回避したい ――激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。【完結】
 ◇

 放課後の部活を終え、私は鉛のように重い足取りで家へと帰っていた。

 期末テストもすべて返却され、まもなく夏休みを迎えようとしている。
 本格的な真夏の到来を告げるように、ジージーという蝉の声がだいぶ大きく聞こえていた。

 自分で鍵を開けて家に入ると、玄関のたたきに、大きくて綺麗なスニーカーが置かれているのが目に入った。

「おかえり」

 同時に、リビングの奥から聞き慣れた低い声が聞こえてくる。

「……お父さん!?」

 私がひどく驚いて靴を脱いでいると、お父さんがひょっこりと顔を出して微笑んでいた。

「こんな時間にいると思わなくて、ビックリしたー!」

 お父さんは動物病院の院長をしているため、いつも帰りが遅い。
 平日のこんな明るい時間に家にいるなんて、奇跡に近い。

「今日の午後は診察も早く終わってね。入院も、最近退院した子が多くて、みんな落ち着いてて。夜はお母さんが病院に残って看ててくれるっていうから、早く帰ってきたんだ」

 優しい声で病院の状況を教えてくれた。

「ごはん作ったけど、もう食べる?」

「うん! お父さんのごはん、久しぶり!」

 私はすっかり嬉しくなって、急いで洗面所へ手を洗いに向かった。

 久々に家で一緒に過ごせるお父さんの存在に、冷えていた心がぽかぽかと温まっていく。

 手を洗いながら、『家で待ってるから連絡して』というなっちゃんとの約束が頭をよぎったけれど。

(もうちょっとだけ、このむくれた気持ちを落ち着かせてからにしたいな……)

 私はそう言い訳をして、連絡を入れるのを少し先延ばしにしてしまった。
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