幼馴染への三度目の失恋を回避したい ――激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。
 ◇

 お父さんと二人で食卓を囲む。

 しばらくの間ゆっくりと話せていなかった分、話したいことが次々と溢れてきて、「あとね……」とマシンガントークになってしまう。

 そんな私の話を、お父さんはずっとニコニコしながら聞いてくれる。

 文化祭を振り返っていたら、自然となっちゃんのライブの話題に辿り着いた。
 美しく響き渡る由利さんのピアノと重なる、彼の切なげな歌声を思い出す。

 少し胸が痛くなりながらも、私は明るく話し出した。

「……それでね。なっちゃんがステージで歌ったんだよ。部活は変わらずバスケ部なんだけど、ゲストとして軽音部のバンドに、ボーカルで出て」

「へえ! ああ。なんか、『なっちゃんは歌が上手い』って、めぐみが中学の頃に言ってた気がするな」

 昔話したことを、お父さんは覚えていたようだ。

「うん、すっごく上手だったよ。初めてちゃんと聴いたんだけど、感動しちゃって……」

 そこまで言って、急に言葉が続かなくなってしまった。

「めぐみは昔から、なっちゃんのこと大好きだもんなあ」

 お父さんが、目を細めて笑う。

 中学生までの私なら、「うん、大好きだよ!」と無邪気に軽く答えていたかもしれない。
 けれど、今は……その言葉を口にすることが、どうしてもできなかった。

「…………」

 顔が熱くなるのを感じ、それがお父さんにバレないように、慌てて白米を口いっぱいに詰め込んだ。

 ◇

 お父さんとの温かい時間に甘えていたら、時計の針はもう二十時近くを指していた。

 とりあえず制服からラフな部屋着に着替えたものの、リビングのソファから動けずにいた。

(どうしよう……そろそろ連絡しなきゃ)

 頭ではそうわかっているのに。
 次の一歩が踏み出せず、テレビのバラエティ番組をぼーっと眺める。

 ――ピーンポーン。

 玄関のインターホンが鳴る。

(あ……なっちゃん、かも)

 ビクッと心臓が跳ねる。

 お父さんが「光かな?」と呟きながら廊下に向かい、モニターも確認せずにガチャリとドアを開けた。

「……おお。なっちゃんか」

 奥から聞こえてきたその声が、答え合わせとなった。

 少しして、お父さんがリビングに戻ってくる。

「めぐみ、なっちゃん来たよ。用事があるって」

「あ……うん」

 小さく返事をしてソファから降りた。

 一度洗面所に寄り、鏡を覗き込んで自分の髪や顔におかしいところがないか確認する。

 そして、「ふうっ……」と小さく深呼吸をして、玄関へと向かった。
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