幼馴染への三度目の失恋を回避したい ――激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。【完結】
 ◇

 案内されたカラオケの部屋に入り、私はソファに鞄を置いた。

(なっちゃんの歌、楽しみすぎる……!)

 文化祭の打ち上げにクラスで来た時は、彼はみんなに囲まれてリクエスト攻めに遭っていたので、私は何もお願いできなかった。
 だから今日は、なっちゃんを独占するつもりだ。
 もちろん、歌ってほしい曲をすべて歌わせたら喉が枯れちゃうから、数日かけて悩みに悩み抜いた厳選リストをスマホに用意してきている。

 手始めに、私は誰もが知っている有名なほんわかアニメの主題歌を入れた。
 歌いながらチラッと向かいの席を見ると、浮かれている私に対してなっちゃんが妙におとなしい。

(あ、私、はしゃぎすぎてうるさかったかも。それに、最初はもっとしっとり系から入ればよかったかも……)

 少し後悔しながら、私は一曲目を歌い終えた。

 次の曲をなっちゃんがまだ入れていなかったので、私は自分のスマホの『なっちゃんへのリクエストリスト』を一緒に見られるよう、立ち上がって彼のすぐ隣へと移動した。

「なっちゃん、これ歌える?」
「うん」
「じゃあ、これは?」
「……歌える」
「えー、どっち先にしようかな……。あ、なっちゃん自分が歌いたいのあったら、もちろん先に入れていいからね!」

 私がスマホの画面を見せながら喋っていると、ふいに低い声が降ってきた。

「……めぐ。近い」

「?」

 顔を上げると、なっちゃんの頬が、触れそうなほどすぐ横にあった。
 彼の黒い瞳が、戸惑うように揺れている。

(うわっ! ……暗くて、距離感間違えた……!)

「ご、ごめんっ!」

 私は慌てて距離を取った。

「……いや、いいんだけどさ」

 なっちゃんの顔を盗み見ると、嫌がっているというよりは、少し恥ずかしそうにしていた。
 私は大人しく、元の向かいの席に戻る。

「……どっちが先がいい?」

 なっちゃんに聞かれ、私はテーブル越しに「……こっち」と、明るくてみんなで盛り上がれる系のポップソングをそっと指さした。

 なっちゃんは、文化祭のライブで歌った二曲とはまた違った雰囲気のその曲も、器用に歌いこなしてみせた。
 私はさっきの恥ずかしさも忘れ、すっかりテンションが上がってしまった。

 無限になっちゃんのいろんな歌を聴いていたかったが、疲れさせないように、私も比較的得意なものを選んで交互に歌った。
 彼も私の歌に合わせて、遠慮がちにタンバリンを振ったりしてノッてくれた。

 でもやっぱり、こういう密室でラブソングを歌うと……。
 なんだか、曲の歌詞を目の前の本人に捧げているみたいで、照れくさくて隠れたくなる。
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