一夜の過ちのはずが政略結婚相手の社長に溺愛されています
私の気持ちなんて、最初から関係ない。

(……諦めなきゃ)

そう思うのに、胸の奥がじくじくと痛む。

仕事に集中しようとしても、気づけば彼のことばかり考えてしまう。

そんな中、その日も私は残業をしていた。

静まり返ったフロア。パソコンの音だけが小さく響く。

資料の最終チェックをしていると、不意に背後から声がした。

「まだ残ってたのか」

振り向くと、そこに九条社長が立っていた。

「……もう少しで終わります」

できるだけ平静を装って答える。

「そうか。じゃあ、待ってる」

「え……」

思わず聞き返しそうになるけれど、社長はそれ以上何も言わず、近くのデスクにもたれかかった。

待ってる――その言葉だけで、胸がざわつく。

(どうして……)

分からないまま、私は必死に作業を終わらせた。

「……終わりました」

「見せて」

隣に立たれて、画面を覗き込まれる。
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