一夜の過ちのはずが政略結婚相手の社長に溺愛されています
距離が近い。

「……うん、これなら皆分かりやすいだろう」

穏やかな声。

ほっとしたように息をつくと、不意に視線がぶつかった。

至近距離で、見つめ合う。逸らせない。

(……やっぱり、好き……)

諦めようとしたばかりなのに、気持ちは少しも消えていなかった。

「社長……」

名前を呼びかけた、その瞬間。

気づいたら、距離がなくなっていた。

唇が触れる。

「……ん」

一瞬、何が起きたのか分からない。

でもすぐに、柔らかい感触と体温が現実だと気づく。

離れたくない、と思ってしまう。

「……っ」

浅く息をつくと、社長の手が私の頬に触れた。

「好き、なんだろ」

低く、確かめるような声。

その一言で、胸の奥が一気にほどけた。

(……分かってくれてる)

それが、どうしようもなく嬉しくて。

私は小さく頷いた。
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