一夜の過ちのはずが政略結婚相手の社長に溺愛されています
広いフロアの向こう。廊下を歩く後ろ姿。

会議室から出てくるところ。

たまにしか見られないのに、そのたびに目で追ってしまう。

冷たい人、という印象はなかった。

むしろ、思っていたよりずっと柔らかい。

「お疲れさま」

すれ違った社員に、さりげなくそう声をかける姿とか。

会議室から出てきたあと、誰かの話に軽く笑って応じているところとか。

遠くから見ているだけでも分かるくらい、自然体で――余裕があって。

(やっぱり、素敵な人だな……)

気づいたときには、もう遅かった。

ただの憧れだったはずなのに、胸が少し苦しくなる。

もちろん、話す機会なんてない。

私は一般事務で、関わることなんてほとんどないから。

それでも、たまに――ほんの少しだけ、接点ができることがある。
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