一夜の過ちのはずが政略結婚相手の社長に溺愛されています
けれど次の瞬間、父の表情がぱっと明るくなる。

「そうか、それは都合がいい」

満足そうに頷いて、蒼真さんへ視線を向ける。

「だったら話は早いですね、社長」

「……ええ」

蒼真さんは短く応じた。

その横顔はいつも通り落ち着いていて、さっきの驚きが嘘みたいだった。

私は、まだ現実を受け入れきれていないのに。

(どういうこと……?)

あの夜のことが、頭をよぎる。

抱きしめられた感触。名前を呼ばれた声。

忘れようとしていたはずなのに、鮮明に蘇る。

その相手が――今、目の前にいる。

しかも、結婚相手として。

逃げ場なんて、どこにもない。

「改めて、よろしくお願いします」

蒼真さんが静かに言った。

仕事のときと同じような、穏やかな声。

けれどその視線だけが、まっすぐに私を捉えて離さない。
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