一夜の過ちのはずが政略結婚相手の社長に溺愛されています
「……はい……」

小さく頷くことしかできなかった。

まさかの婚約相手。そんな言葉で片付けられる状況じゃない。

これは偶然なんかじゃない――

そう思わせるほど、胸が強くざわついていた。

父の視線が、私と蒼真さんの間を行き来する。

「もしかして……綾音の好きな男というのは、九条君か?」

心臓が跳ねた。

言葉に詰まる私の代わりに、蒼真さんが静かに口を開く。

「はい」

その一言に、空気が変わる。

「綾音さんの想う相手は、この俺です」

迷いのない声だった。

真っ直ぐで、揺るがない。

それを聞いた父は、一瞬だけ驚いた顔をしたあと、満足そうに頷いた。

「そうか……それなら話は早いな」

納得したように笑う。

私は――ただ、混乱していた。

(どうして……そんなふうに言えるの……?)
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