一夜の過ちのはずが政略結婚相手の社長に溺愛されています
「綾音……」

名前を呼ばれるだけで、胸が震える。

逃げ場なんて、もうどこにもない。

視線が絡み合う中で、ゆっくりと距離が詰まっていく。

触れられるたびに、体の奥が熱を帯びていくのが分かる。

「……大丈夫か」

低く、確かめるような声。

私は小さく頷いた。

「……はい……」

その瞬間、強く抱き寄せられる。

息が重なり、意識が揺れる。

「ああ……綾音……」

初めて聞くような、余裕を失った声だった。

それだけで、胸がいっぱいになる。

(こんなふうに……求められてる……)

あの夜とは違う。

今は、ただの一度きりじゃない。

ちゃんと、私を見てくれている。

「……好きです……」

こぼれるように、また言葉が出る。

何度でも伝えたくなる。

「あなたが……好きなんです……」

その言葉に応えるように、抱きしめる力が強くなる。
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