一夜の過ちのはずが政略結婚相手の社長に溺愛されています
それでも――社長令嬢という現実は、容赦なく私に覆いかぶさってくる。

仕事を終えて実家に戻ったその日、リビングに入った瞬間、空気がいつもと違うことに気づいた。

ソファに座る父は、やけに機嫌がいい。

「綾音、ちょっといいか」

その声に、嫌な予感がした。

「……何?」

できるだけ平静を装って向かいに座ると、父は満足そうに頷いた。

「結婚が決まった」

一瞬、言葉の意味が理解できなかった。

「え……?」

思わず聞き返す。

「取引先の社長だ。条件は申し分ない」

さらりと告げられたその一言で、頭の中が真っ白になる。

結婚? 私が?

「……待って、そんなの聞いてない」

「今言ったからな」

当たり前のように言い切られて、胸がざわつく。

「私の気持ちは……?」
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