一夜の過ちのはずが政略結婚相手の社長に溺愛されています
かすれる声で問いかけると、父は少しだけ眉をひそめた。

「気持ち?」

まるで、そんなものが存在しないかのような反応だった。

その瞬間、胸の奥が冷たくなる。

「……私、好きな人がいるの」

言ってしまった。

言うつもりなんてなかったのに、気づけば口からこぼれていた。

父は一瞬だけ私を見たあと、すぐに視線を逸らした。

「そんなのはどうだっていい」

あっさりと、切り捨てられる。

「付き合ってるわけじゃないんだろう」

「それは……そうだけど……」

言葉が続かない。否定できない自分が、悔しい。

「なら問題ない。相手は誰だっていいんだ」

「……っ」

違う。そんなわけ、ない。

誰でもいいなんて、そんなはず――

「これでうちの会社も安泰だ」

父は満足そうにそう言って、テーブルの上の書類を軽く叩いた。
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