一夜の過ちのはずが政略結婚相手の社長に溺愛されています
抱きしめられたまま、私はその場に腰を下ろした。

規則正しい鼓動が、すぐ近くで聞こえる。

安心させるように、背中を軽く撫でられる。

(やっぱり……)

こんな状況なのに、胸が熱くなる。

(やっぱり、好き……)

どうしても、諦められない。この人を。

「……好きです」

気づいたら、口にしていた。

抱きしめられたまま、小さく呟く。

返事はない。それでも、言葉は止まらなかった。

「会社に入る前から……ずっと、見ていました」

自分でも驚くくらい、素直な気持ちが溢れていく。

でも、社長は何も言わない。

ただ、腕の力を少しだけ強めて、私を抱きしめるだけ。

それが、余計に苦しくて――でも、嬉しかった。

どれくらい時間が経ったのか分からない。

やがて、外から声がして、エレベーターの扉がゆっくりと開いた。
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