虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
「落ち着いて。兄様らしくないわ」
「くそ……っ」

 ムガルバイトは悪態をついたあと、唇を噛みしめてから勢いよく近くにあった空の木箱を蹴りつける。
 それはバコンと大きな音を立て、霧散した。

「ひ、いぃ……! 私の顔が……!」
「だ、誰か……! た、助け……!」
「あの女……! 絶対に許さん……!」

 エクリーユに身体の一部を燃やされたものたちは、黙って見ていることしかできなかった使用人たちに助けを求める。
 その惨めで惨たらしい命乞いによってようやく我に返ったムガルバイトは、静かに戸惑う下々のものたちへ命じた。

「父上には今、休息が必要だ。医者を呼んで、治療をして」
「か、かしこまりました……!」

 兄の指示を受けた人々は、パタパタと小走りでその場をあとにする。
 彼はその様子を見送ったあと、王座の間を見渡し、満身創痍の家族たちに冷たい視線を送った。

「五体満足なのは、俺とイトゥク。リシーロだけかな……」

 名前を呼ばれたイトゥクは、ビクリと全身を震わせて怯える。
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