虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
(やっと、邪魔者がいなくなったわね……。このまま、二度と帰ってこなければいいのに)

 悔しそうに唇を噛みしめる兄の姿を目にした第3王女は、白百合のような美しい微笑みを浮かべて彼を慰めた。

「兄様。あの女は、私たち家族を酷い目に遭わせた罪人よ。隣国で引き取ってくれるのなら、それに越したことはないでしょ!?」
「違う。あいつだけは、駄目なんだ……!」

 いつも余裕綽々のムガルバイトがこれほど動揺する姿を見せるなど、明らかにおかしい。

(なんで? どうして兄様は、これほどまでにあの女に入れ込むの……?)

 兄の秘密を知らない、家族の仲で唯一異能を発現できなかった女。
 王家にはどう考えても、不要な存在だった。

(私のほうがかわいくて、異能を使えて、みんなから愛されているのに……!)

 リシーロは何よりも大事なムガルバイトからの愛をどれほど欲しても得られないことに、苛立ちを隠せなかった。

(――冷静になるのよ、リシーロ……!)

 何度も己に言い聞かせた少女は、彼に纏わりつく腕の力を強める。
 ここで冷静さを失っては、手に入るものも手に入らないと気づいたからだ。
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