虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
「イトゥク」

「は、はい……っ」

「怖がらないで。何もしないよ。君はただ、俺の言うことだけを聞いてくれたら、それでいい」

 ムガルバイトが他の兄とは違い、家族に暴力を振るったことがないと彼もよく知っているのだろう。
 だからこそ、逆らわずに大人しく従ってくれる。

(わたしと兄さん、雑用係のイトゥク兄さんがいれば、誰にも邪魔されることなく幸せに暮らせるわ……!)

 大嫌いな姉の起こした反乱のせいで、一時はどうなることかと思ったが――なんとか幸せになる道筋を導き出したリシーロは、心の中でエクリーユに宣戦布告をした。

(今に見ていなさい! あなたが大好きだったムガルバイト兄さんとわたしがラブラブだって、隣国まで轟かせてあげる……!)

 姉は暴力を受けなくて済むと安堵しているかもしれないが、平穏な暮らしができるのは一瞬だけだ。
 たとえこの国から逃げ果せたとしても、彼女に待ち受けるのは永遠の苦しみ。
 精神的な攻撃からは、逃れられるはずがない。

(離れて暮らしていたとしても、いくらでも攻撃する方法はあるんだから……!)

 リシーロは人知れず、より一層彼女に苦痛を与えられるように立ち回ると決め――こうして、大好きな兄のぬくもりを堪能した。
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