虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
「エクリーユに、もっと俺を好きになってもらうためだ」

「な、何を言っているの……? あなたの婚約者は、この私よ! 王妃になるのだって……!」

 当然、リシーロはその発言に腹を立てた。
 己に相応しいのは自分だと声を荒らげる時点で、王妃にはふさわしくないとなぜ気づけないのだろうか?
 エクリーユの髪色と同じ黒目に冷え冷えとした感情を宿した青年は、彼女を突き放すように言い放つ。

「この国の王は、君じゃない。この俺だ」

「な……っ」

 その発言を受けた少女は、わなわなと唇を震わせる。
 ようやく眼中にもないことを自覚したのだろう。
 彼女は白百合の君と国民たちから謳われるほどに綺麗な白髪を振り乱し、声を荒らげた。

「最初から、私を利用するつもりだったのね……!」

「ああ、そうだよ。あの子を痛めつけようとしなければ、もう少しだけそばに置いてやってもよかったのに……。君の勝手な行動によって、俺の計画が全部台無しだ」

「酷い! わたしがせっかく、兄様を王にしてあげたのに!」

「俺は王になりたいなんて、言っていないよ」

 ムガルバイトは最初から、王になるつもりはなかった。
 長兄から順番に王座に就き、民の反感を買いながら私腹を肥やす兄たちの姿を最愛の妹とともに特等席で見る。
 それが青年の理想とする生き方であった。
 なのに――己の願望は、夢物語に成り果てた。
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