虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
(倒れる……っ)

 小さな身体が一瞬だけ宙に浮かび、前方に傾いていく。
 少女は痛みに耐えるため、ぎゅっと真紅の瞳を閉じた。

「危ないな……」

 第2王女はいつの間にか、室内にいたと思われる男性に抱き留められていた。
 それが誰かなのかを声で気づき、少女は彼の姿を視界に映しながら呆然と呟く。

「へ、い、か……?」

「ドレスはよく似合っているが、丈が長すぎる。もう少し、短いものを用意させよう」

「あ、ありがとう……?」

「どういたしまして」

 彼は紫の瞳を優しく和らげると、エクリーユの額に優しく口づけた。

(リドディエ様が……。私の、額に……?)

 ムガルバイトにだってしてもらった覚えのない体験をした第2王女は、目を白黒させて驚く。

 その様子を不愉快そうにじっと見下した陛下は、低い声でぽつりと吐露する。

「僕が触れるのは、嫌か」

 その声音が、瞳が、細い身体を抱く手が、全身が訴えかけている。

『拒絶しないでくれ』

 まるで、捨てられた子猫のように――。
< 76 / 246 >

この作品をシェア

pagetop