虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
(心を許した人間以外に見られるのが、いつだって怖かった)

 第2王女という肩書きは、本来己の身を守る鎧であったはずなのに――無能の烙印を押された自分は身ぐるみを剥がされ、使用人以下の扱いを受けていたからだ。

『ねぇ、見て……。第2王女よ……』

『なんてみすぼらしい格好をしているのかしら』

『仕方ないわ。不義の子ですもの』

 ――でも……。

 どれほど周りから白い目で見られようとも、今日は気にならなかった。
 エクリーユは黒猫を追いかけるのに必死だったからだ。

「ど、どこに行くの……?」
「なぁん」
「も、限界よ……っ。や、休ま、せて……っ」

 異能を顕現させるための体力づくりを始めたおかげでだいぶスタミナはついたが、強大な炎を長時間操り続けた翌日だ。
 数時間眠った程度で回復するはずもなく、ちょっと早歩きになった程度ではすぐに限界が来てしまう。

 エクリーユはその場にへたり込みそうになりながらも、廊下を右に曲がってある部屋に飛び込んでいった獣の背中を追いかけ――。

「ぁ……っ」

 中へ一歩足を踏み入れた瞬間、ドレスの裾を踏んづけてつんのめる。
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