虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
「寝ていたのか? 呼びかけても返事がないから、心配した」

「いえ……。ぼーっと、していて……」

「そうか。付き合わせて、悪かった」

「いいの。それは、問題ないわ」

 謝罪をするべきなのは、彼ではなく自分のほうだ。
 少女は真紅の瞳を何度か瞬かせると、リドディエに問いかけた。

「聞いてもいいかしら」

「もちろん」

「あの、ね。異能をうまく使いこなすためには、特殊な訓練が必要なの……?」

「特別なことをする必要は、ないが……」

 陛下が言葉を濁したのであれば、何かしらの懸念点があると考えるべきだろう。

(自らの意思を、しっかりと主張しなければ……)

 そう考えた少女は、はっきりとした口調で叶えたい願いを口にした。

「私、陛下のお役に立ちたいわ」

「こうして一緒にいてくれるだけで、僕は幸せだ」

「でも……」

「もう少し、ここでの生活に慣れてからがいいだろう」

「そう、ね……」

 エクリーユは悲しそうに眉を伏せ、それ以上口答えをする気にはなれなかった。
 やはりまだ、誰かに歯向かうほどの勇気を得られていないからだ。

(自らの意思を伝えるのは、もう少しあとになってからがいいわ……。今は陛下に従順で、いい子だと印象づけなければ……)

 人知れず心の奥底にある決意を宿した少女は、こうして彼の仕事が一段落するまで陛下の腕の中に庇護され続けた。
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