太陽と狐は「」をする
「よし、これでよし……って、もうこんな時間?!」



 時計を見れば、五時四十五分を回っている。
 あと十五分足らずで侍女が来てしまう。この子をどうやって隠そうかと灯は焦りながら考えた。



(可哀想だけれど……こうするしかないわよね)



 未だ眠っている狐をそっとベッドの下に隠す。
 人に見られたくないものはベッドの下だと、青春小説で読んだ気がしたからだ。
 そして救急箱を片付け、上着を戻し、自分が何をしていたか探られないようにする。



(そういえば、目を覚ましたら外に出ていく必要があるわよね……窓を開けておいた方がいいかしら)



 そんなことを思い立って、部屋の一番大きな窓を開く。
 その後と同時に、ガチャリと部屋の扉が開く音がした。



「おはようございます、神子様……
 本日は随分とお早い起床ですね」

「え、ええ。なんだか早くに目が覚めてしまって」

「窓を開けてどうしたのですか?」

「それは……ちょっと、風を感じたくて」

「そうですか……
 落ちないようにお気をつけください」

「わかっているわ。ありがとう」



 神子として相応しい振る舞いを心がけ、美しい笑顔を向ける。
 侍女はいつもの通り頭を下げ、『もう洗顔が終わっていますので』と灯の髪を結う。
 おくびにも出さない心の内では、例の狐が勝手に出たり鳴いたりしないか気が気でなかった。
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