クール王子は愛したがり
Ⅱ
二人は大学は違うが、乗る電車は同じだ。

そのためいつも一緒に行き、帰りも一緒だ。
一緒に電車に乗り、藤乃が二駅先に降りる。

「アヤ、またね!」

「うん。
迎えに行くから、大学で待ってて」

「わかった!」

小さく手を振り合い、藤乃が降りたのを確認すると………
途端に、絢世の纏っていた雰囲気が変わる。

温かく、甘ささえ感じる程だった雰囲気。
それが一変して、冷たく落ちる。

“俺に近寄るな”と言っているかのような、とてつもないオーラだ。

S大学の最寄り駅で降り、大学へ向かう。
門をくぐると、真っ直ぐ喫煙所まで行く。
そしてまず、一服するのがルーティンだ。

藤乃の前では、煙草は吸わない絢世。
そのため、大学に来て一番に煙草を吸うのだ。

そこに「おはよ!」と声をかけられ、善一郎が煙草を吸い始めた。

「おはよ」

「あーちゃん、今日夜空けといてよ」

「は?なんで?」

「トキさん(高校の先輩)に飲もうって誘われてさ。
俺もリンと喧嘩してむしゃくしゃしてるし、話聞いてよ。
藤ちゃんを寝かしつけてからでいいからさ、来てよ」

「寝かしつけてって…
フジは赤ちゃんじゃねぇよ」

「じゃあ、普通に来てよ!
藤ちゃんには、先寝ててね〜って言って」

「フジは俺の腕の中じゃないと寝れない」

「フッ…やっぱ、赤ちゃんじゃん(笑)」

「うるさい」
吸い殻を備え付けの灰皿に捨て、その場を後にする絢世。

そんな絢世を慌てて追いかける、善一郎。

「あ!それか、藤ちゃんも連れて来ていいからさ!」

「フジがそんなうるさい所に行くわけがない」

「いいじゃん!たまには、飲もうよ!」

「フジと離れたくない」

「………じゃあいいよ、もう…」

「そう。
じゃあな」

そう言って、講義室に向かう。
すると、後ろから善一郎の声が耳に入ってきた。

「――――あ!藤ちゃん?
ごめんね、突然。
……うん、うん。
あ、それでね。お願いがあっ………」
そこまで話したところで、絢世にスマホを取られた。

「もしもし?フジ?」

『あれ?アヤ?』

「電話、気にしないで。
ごめんね、急に」

『え?え?
ゼンくん、大丈夫なの?』

「うん。
あ、フジ時間間に合わないんじゃない?
行かないと!」

『え?あ、うん。
じゃ、後でね…!』

「うん、またね」

通話を切り、善一郎を睨みつける。

「今日、行くから。
フジに勝手に電話するな」
そしてスマホを押し付けるように返し、また歩き出す。

「わかった!」
善一郎は笑いながら、小さく手を振るのだった。




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