クール王子は愛したがり
二人は大学は違うが、乗る電車は同じだ。

そのためいつも一緒に行き、帰りも一緒だ。
一緒に電車に乗り、藤乃が二駅先に降りる。

「アヤ、またね!」

「うん。
迎えに行くから、大学で待ってて」

「わかった!」

小さく手を振り合い、藤乃が降りたのを確認すると………
途端に、絢世の纏っていた雰囲気が変わる。

温かく、甘ささえ感じる程だった雰囲気。
それが一変して、冷たく落ちる。

“俺に近寄るな”と言っているかのような、とてつもないオーラだ。

S大学の最寄り駅で降り、大学へ向かう。
門をくぐると、真っ直ぐ喫煙所まで行く。
そしてまず、一服するのがルーティンだ。

藤乃の前では、煙草は吸わない絢世。
そのため、大学に来て一番に煙草を吸うのだ。

そこに「おはよ!」と声をかけられ、善一郎が煙草を吸い始めた。

「おはよ」

「あーちゃん、今日夜空けといてよ」

「は?なんで?」

「トキさん(高校の先輩)に飲もうって誘われてさ。
俺もリンと喧嘩してむしゃくしゃしてるし、話聞いてよ。
藤ちゃんを寝かしつけてからでいいからさ、来てよ」

「寝かしつけてって…
フジは赤ちゃんじゃねぇよ」

「じゃあ、普通に来てよ!
藤ちゃんには、先寝ててね〜って言って」

「フジは俺の腕の中じゃないと寝れない」

「フッ…やっぱ、赤ちゃんじゃん(笑)」

「うるさい」
吸い殻を備え付けの灰皿に捨て、その場を後にする絢世。

そんな絢世を慌てて追いかける、善一郎。

「あ!それか、藤ちゃんも連れて来ていいからさ!」

「フジがそんなうるさい所に行くわけがない」

「いいじゃん!たまには、飲もうよ!」

「フジと離れたくない」

「………じゃあいいよ、もう…」

「そう。
じゃあな」

そう言って、講義室に向かう。
すると、後ろから善一郎の声が耳に入ってきた。

「――――あ!藤ちゃん?
ごめんね、突然。
……うん、うん。
あ、それでね。お願いがあっ………」
そこまで話したところで、絢世にスマホを取られた。

「もしもし?フジ?」

『あれ?アヤ?』

「電話、気にしないで。
ごめんね、急に」

『え?え?
ゼンくん、大丈夫なの?』

「うん。
あ、フジ時間間に合わないんじゃない?
行かないと!」

『え?あ、うん。
じゃ、後でね…!』

「うん、またね」

通話を切り、善一郎を睨みつける。

「今日、行くから。
フジに勝手に電話するな」
そしてスマホを押し付けるように返し、また歩き出す。

「わかった!」
善一郎は笑いながら、小さく手を振るのだった。




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