クール王子は愛したがり
夕食を終え、少しゆっくりしてマンションを出ようとしている絢世。

「――――じゃあ、フジ。先に寝てて?
たぶん、夜中になると思うから」
玄関まで見送る藤乃の頭を撫で、切なく微笑む。

「そっか…
夜中なら、先に寝てた方がいいよね…(笑)」

「うん。
ごめんね、一人にして…
…………うーん…やっぱり、フジを寝かせてから行こうかな?」

「フフ…大丈夫だって!
アヤこそ、気をつけてね?
最近、ほんと物騒だし…」

「うん、わかった。
いざとなったら、正当防衛で殺るから大丈夫だけどね」

「………」
(ま、また、恐ろしいことを……)

真剣な眼差しで言う絢世を困ったように見つめる、藤乃。

「あ、フジはもう外出禁止だからね?
風呂入って寝な?」

「うん、わかった」

「ん。じゃあ、おやすみ」

小さく手を振り合い、絢世はマンションを出た。

駅に向かいながら、煙草を吸い始める絢世。
雰囲気も恐ろしく落ちている。

電車で向かい居酒屋に着くと、店の前で善一郎が煙草を吸っていた。
「あーちゃん!
良かった…来てくれた!」

「早く行こ。
トキさん、店で待ってるんだろ?」

「あぁ、でもそんな急ぐことなくない?
もう少し、吸いたい」

「俺は、さっさと終わらせて帰りたい」

「………ほんっと、藤乃中毒だね…(笑)」

「………」

「そんな睨みつけんなよ(笑)ほんとのことじゃん…!」

「そうかもな…
フジのこと好きすぎて、おかしくなってるのわかるから。
俺の方が、確実にフジにベタ惚れしてる」

「フフ…藤ちゃんって、不思議な何かがあるよね…(笑)
めっちゃ可愛いわけでもないのに、惹かれるってゆうか……」
クスクス笑う、善一郎。

「惚れるなよ?」

「は?バカ!
俺にはリンがいるっての!!
今は喧嘩中だが…」

「ふん」

「ふんって…(笑)
まぁでも、惚れるなって言われて惚れないってのは無理だよ?」
善一郎は困ったように笑い、でもどこか鋭い視線を送る。

「は?」

「人の気持ちは他人には左右出来ない。
………つか!自分自身でも左右出来ないじゃん」

「………」

「あーちゃん、もしさ。
藤ちゃんに“私のこと忘れて?”って言われて、忘れられる?」

「………」

「無理だろ?」

「………」

「そうゆうこと!」

肩を軽く叩いてくる善一郎に、絢世は何とも言えない気持ちになるのだった。




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