生真面目秘書だった彼がハイスペ副社長になって滾る執愛を刻み込んできます
 そんな人物だからこそ、社長業も難なくこなす。
 それに会社のトップのポジションを与えれば、香梨奈は日本にいても自分の力を十分に発揮できる。そう考えて、戻ってくるはず。

 両親も、そして理彩子もそう思って疑わなかった。しかし、香梨奈は日本には戻ってこなかった。

 そうなると、残された会社は誰が運営していくのかという問題にぶちあたる。

 父はKASHIWAフードの社長業があり多忙、義母もほかの子会社の運営にかかりっきり。とてもではないが、ふたりには新しい会社に手をかける時間は残されていなかった。
 そこで目をつけられたのが、理彩子だ。

 両親としてはかなりの妥協だが、それ以外の選択肢がなかったのだろう。
 周りは『白羽の矢が立った』などと理彩子を褒めそやしたが、こちらとしては貧乏くじを引かされた、もしくは尻拭いさせられたと言っても過言ではない。

 勤めていた会社を無理やり辞めさせられたのだから、それを幸運だなんて思うはずない。

 そもそも両親は、理彩子にまったく期待していなかった。
 面と向かって『香梨奈が戻ってこないのなら、仕方がない。お前が香梨奈の代わりになれるとは思えないが、なんとか柏のメンツを維持しろ。お前は香梨奈の穴埋め要員だ』とはっきり言われれば、誰だって反発したくなる。

 最初こそ抵抗はした。だが、それを許してくれないのが、理彩子の両親だ。
 あの手この手で理彩子の逃げ道を塞いできたため、KASHIWA雑貨の社長の座に渋々とだが就任を決めた。いや、決めざるをえなかった。

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