生真面目秘書だった彼がハイスペ副社長になって滾る執愛を刻み込んできます
 その言葉を聞いたとき、もうなにを言っても無駄だと落胆した。

 最初が強引なら、最後も強引だ。自分の境遇があまりに惨めで、自身に対してあざ笑いたくなる。

 両親的には、最初から理彩子はスペアのつもりだった。
 それはわかっていたが、結果が出ればその考えを覆せるはず。そう信じていたのに……。

 なにを言っても、この決定事項を変えられない。
 この会社の筆頭株主は両親だ。彼らの意見は絶対である。

 彼らが言う腰掛け社長など、いてもいなくてもさほど重要性を感じないのだ。
 昔から柏家は香梨奈ファーストだ。それをまた痛烈に感じただけだった。

(私はいつまで経っても、柏家の一員としては見てもらえないのね……)

 また指が止まってしまう。光輝に気づかれないよう、小さく頭を横に振って雑念を振り払おうとする。

 この会社の社長としていられる時間は残りわずかだ。
 その間は、KASHIWA雑貨の社長としてのプライドを持って仕事に挑みたい。

(できることは、すべてやろう!)

 まだ、トップ交代の内示は出ていない。社内でこのことを知っているのは理彩子だけだ。

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