生真面目秘書だった彼がハイスペ副社長になって滾る執愛を刻み込んできます
 彼は、三十五歳。とても人の目を惹く容姿で、モデル顔負けのスタイルだ。

 黒髪は綺麗に整えられ、スーツ姿が恐ろしく似合う。
 フレームなしのメガネをかけた彼は、まさに隙がまったくないデキる男だ。

 クールと言えば聞こえはいいが、理論武装で言い負かしていく。
 邪な気持ちで近寄ったら痛い目に遭うぞと言わんばかりの男性だ。今日もまた人々からの視線の的になっている。

 そんな彼はいつものように淡々とした様子ではあるが、少しだけ歯切れが悪い気がした。足を止めて彼を見上げる。

「藤家さん、なにか懸念材料があるの?」

 商談相手はたしか、イタリアに本社を構える生活雑貨を取り扱う企業だ。
 以前より取引実績があり、日本人受けする商品が多く売上がよかった記憶がある。

 再び取引ができると喜んでいたのだが、なにか問題があるのか。
 首をかしげると、光輝はふぅと小さく息を吐き出す。

「代替わりしたのは、ご存じですか?」
「え? ええ」

 だからこそ今回顔合わせの意味合いもあり、日本に来る用事があるというタイミングで商談の場を整えたのだが……。
 光輝に視線を向けると、理彩子を試すような目を向けてくる。

「新社長はお若く、手が早いとの噂です」

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