生真面目秘書だった彼がハイスペ副社長になって滾る執愛を刻み込んできます
「今、新人が営業部で研修中ですが……。彼女たちが、おふたりに憧れの眼差しを向けていましたよ」
「え?」
「『理彩子社長と藤家さんのバディ感、最高! クールなふたり、格好いい!』だそうですよ。おふた方に憧れを抱く新人がたくさんいるようです」

 表情が思わず緩んでしまいそうになる。
 すぐに顔を引きしめたのだが、重田にはお見通しだったようだ。ニヤリと意地悪な笑みを浮かべてくる。

「私はあなたの成長を間近で見てきましたからね。誇らしい気持ちになります」
「……からかわないでください」

 顔を赤らめて視線を泳がせる。すると、重田は豪快に笑いながら離れていった。
 そのうしろ姿を見て、思わず唇を尖らせる。

 会社立ち上げ当時から在籍する人間には、理彩子の情けない姿をたくさん見られている。今さら格好をつけたとしても格好がつかない。それが、妙に気恥ずかしさを感じる。

 肩をすくめた後、光輝とともに社長室へと入った。

(もともと、私は社長なんて器ではないしね)

 すぐそばにいる光輝に気づかれないよう小さく息を吐き出しながら、デスクの椅子に腰掛けてタブレットを操作する。しかし――。

 すぐに手を止めて思わずため息をこぼしそうになり、それを慌てて止めた。

 
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