綾小路くん、距離近いです……っ

《 利用しようと思ったのに……。》

《 Side:哀銘 涼良 》

放課後の教室で、綾小路と道明寺、そして名前を忘れた顔が整っている女子と口論みたいなのを交わしていた。

一番ムカつくのが綾小路。

あいつは多分あの気弱な女子のことが好きだろう。

どさくさに紛れて守ってるし...。

ヒーローかよ。

そして気弱な女子は綾小路が言っていた、早乙女という名前だろう。

顔も名前も綺麗。

そんな柄でもないこと思った俺は、自分自身に舌打ちする。

早乙女の肩が微かに跳ねた。

綾小路は心配そうに早乙女の見ている。

...なんだこれ。まるで俺が悪役みたいじゃん。

......納得行かないし。

しかも綾小路のあの鉄壁無表情はどうしたんだよ。

好きな女子相手にあんなメロメロになんのか。

俺は元カノ10人以上いるけど、全て俺がフった。

理由は「飽きた」からだ。女子は結局全員媚びを売るために生きてきた下等生物だろ。

...綾小路も同じことを考えていると思ったのに...。

共感性を抱いていたのに...。

あの女子のせいで全てが最悪だ。

でもまんまと裏切った綾小路の方が心底憎い。

だから、まずあいつが好きな女子──早乙女を奪う。

俺のモンにして、綾小路に復讐する。

しかも早乙女はまだ誰の色にも染まってないみたいだから好都合。

俺って運良すぎだろ。思わず口角が上がる。

爽やかぶってる腹黒男子───道明寺が俺を見てあははっと笑っていた。

見透かされているような不快感が湧き上がってきた。

ぎろりと道明寺を睨むが、道明寺は余裕の笑みで返してくる。

「あ、えと...、喧嘩は良くないですよ...」

早乙女が弱々しく口を挟んでくる。

綾小路が俺に喧嘩売るように牽制してくるが、今は早乙女を奪うのが最優先。

「別に喧嘩してない。で?お前早乙女だっけ。なんだよ、近くで見ると可愛いな。」

俺は女子が赤面するような甘いセリフを吐いて、顔を近づけ、耳元で囁く。

「......ウブだね。キスされた事ないの?」

早乙女の顔がみるみるうちに紅潮する。

綾小路が止める声が聞こえてくるが、俺はお構いなしに距離を縮めて、早乙女の肩に頭を置く。

「ふぇっ...!?」

意外にも無防備な声が返ってきて、一瞬動きが止まる。

......こいつ、案外可愛いな。

「...お前の初めて、俺が全部貰うから。」

早乙女の耳たぶを甘噛みしようと顔をもっと近づけた瞬間、パシッと手を掴まれた。

......ちっ。

どうせ綾小路だろ、と思って気だるげに振り返ると、手を掴んだのは道明寺だった。

「早乙女さんは俺のだよ。横取りしないでくれる?......哀銘くん。」

最後、声が急激に低くなった。脅してるのか。......ふぅん。

「あー、無理だわ。いずれ俺が取るんで。」

身長差は3cmなのに、屈辱的だな。

横目で早乙女を見ると、綾小路に抱きしめられていた。

無性に嫉妬心が湧き上がってくる。

あー俺やっぱ早乙女の事好きじゃん。

......これからは手加減しないようにしよ。

そして、綾小路は顔を上げ、挑発的に俺と道明寺を見た。

「...こいつ、俺のだから。」

早乙女の方を見ると、かぁっと顔が赤くなっていた。

かわいい、と思いながらも、綾小路の宣戦布告を無視するわけには行かない。

「最終的に俺が早乙女の彼氏になるんで。あんたらは全員海底に沈んでな。」

舌を出して人差し指で床を指さす。

「んー、俺が海底に沈むわけないから大丈夫。俺の彼女は早乙女さん一択だから。」

「あ?お前らに渡すわけねぇーだろ。早乙女の視界に一切映んな。邪魔。」

...ちっ。どいつもこいつも生意気だな。

そして当の本人はあわあわして筋金入りの鈍感だから気づいてないし。

そんなとこも好きだけど。

もうマジで...これ以上好きにさせんなよ...
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