追われる能天気姫と不愛想な騎士の巻き込まれ逃避行 〜偽りの王女は、初恋の騎士も王位も捨てて自由になりたい〜
1-15 ガラの悪い店
私とキースは
『商人ギルド・バルディア支部』の
店の前に立っていた。
「ここでルビーを売ることにしましょう」
これでもうすぐ路銀が手に入る。
ワクワクしながら、
隣に立つキースを見上げた。
「……あの、なんでギルドなんです?
普通は宝石商で鑑定して売るものでしょう?」
はぁ、とキースが深い溜め息をつく。
「あのねぇ。どうして私がここを選んだのか、
分からないの?」
「ええ、さっぱり分かりませんね」
「このまま宝石商に持ち込んでごらんなさい。
今の私たちでは、
どう見ても高貴な身分には見えないわ。
それなのにあんな大きな
ルビーを売ろうとすれば、
盗品だと思われるかもしれないでしょう?
何しろ護衛騎士がボロボロのマントに、
薄汚れた鎧姿なのだから」
すると何が気に入らないのか、
目を吊り上げるキース。
「はぁ!? 誰のせいでこんな
格好になったと思ってるんですか。
大体、姫こそ何なのですか。
どこからどう見ても平民姿、お互い様でしょう!」
「誰がお互い様よ。もういいわ、
それより早く店に入るわよ」
「はいはい」
肩をすくめるキースを引き連れて、
私は扉を開けた。
――カランカラン
ドアベルを響かせて店内へ足を踏み入れる。
途端に目の前には、いかがわしい……
いえ、胡散臭い光景が飛び込んできた。
昼間だというのに窓が小さいため
店内は薄暗い。
陳列棚には怪しげなアイテムが
所狭しと並べられている。
客は全員が男性で、
どいつもこいつも目つきが悪く
ガラも悪そうだ。
つまり、キースのようなタイプの輩ばかりだ。
「何だか随分と胡散臭そうな店ですね。
とっととブツを売って、ずらかりましょう」
ガラの悪い態度でキースが
ボソリと口にする。
「そうね。同感だわ。
足がつく前に素早く交渉して立ち去りましょう」
するとキースが目を見開いて私を凝視した。
「何よ?」
「いえ……随分とガラの悪い台詞を
口にするなと思って」
「お互い様でしょ。
それじゃ、早速行くわよ」
「いいですか? 交渉は俺がします。
姫はバレないようにフードを
深く被っていてください」
「はいはい」
私は言われた通りフードを目深に被り、
キースの後に続いて店の奥へ向かった。
カウンターの奥にいたのは、
五十代ほどの強面の男性だった。
右目に黒い眼帯、
頬には切り傷の跡がある。
……もしや、若い頃は百戦錬磨の
手練れだったのかもしれない。
「いらっしゃいませ」
キースがカウンターに近づくと、
オーナーが低い声を出した。
「……これを換金して欲しい」
キースがポケットから赤いルビーを取り出し、
ゴトリとカウンターに置く。
するとオーナーの左目がキラリと光った。
「……ほう。これは素晴らしい宝石ですな。
鑑定するまでもない」
「そうか。ならいくらで引き取ってくれる?
これだけ大きいのだから、
百万ジュエルくらいは出して
もらえるのだろうな」
カウンターに肩ひじを突くキース。
「百万ジュエルか。クックック……。
これはまた、えらく大きく出たものですな」
小さく肩を震わせるオーナー。
目つきの悪い男二人が、
カウンターでコソコソと話をしている。
何とも怪しい光景だわ。
「まぁいい、とりあえず鑑定してみるか。
ところでこのルビー、どこで手に入れた?」
オーナーがカウンターのランプに
明かりを灯しながら尋ねてきた。
「あ、そのルビーなら
道端に落ちていた石を……むごっ!」
突然キースが私を羽交い締めにし、
口を力いっぱい塞いできた。
「そ、それならこの間、
近くの鉱山で偶然見つけたものだ!」
「へぇ……鉱山ねぇ……」
オーナーがランプの光をルビーに向けた、
その瞬間。
――ピカッ!
突然、ルビーが激しく赤く輝き始めた。
「あら〜、きれいねぇ」
「一体どういう仕組みになっているんだ?」
キースと二人で感心しながら発光するルビーを見つめる。
すると、オーナーが青い顔でブルブルと震え始めた――
『商人ギルド・バルディア支部』の
店の前に立っていた。
「ここでルビーを売ることにしましょう」
これでもうすぐ路銀が手に入る。
ワクワクしながら、
隣に立つキースを見上げた。
「……あの、なんでギルドなんです?
普通は宝石商で鑑定して売るものでしょう?」
はぁ、とキースが深い溜め息をつく。
「あのねぇ。どうして私がここを選んだのか、
分からないの?」
「ええ、さっぱり分かりませんね」
「このまま宝石商に持ち込んでごらんなさい。
今の私たちでは、
どう見ても高貴な身分には見えないわ。
それなのにあんな大きな
ルビーを売ろうとすれば、
盗品だと思われるかもしれないでしょう?
何しろ護衛騎士がボロボロのマントに、
薄汚れた鎧姿なのだから」
すると何が気に入らないのか、
目を吊り上げるキース。
「はぁ!? 誰のせいでこんな
格好になったと思ってるんですか。
大体、姫こそ何なのですか。
どこからどう見ても平民姿、お互い様でしょう!」
「誰がお互い様よ。もういいわ、
それより早く店に入るわよ」
「はいはい」
肩をすくめるキースを引き連れて、
私は扉を開けた。
――カランカラン
ドアベルを響かせて店内へ足を踏み入れる。
途端に目の前には、いかがわしい……
いえ、胡散臭い光景が飛び込んできた。
昼間だというのに窓が小さいため
店内は薄暗い。
陳列棚には怪しげなアイテムが
所狭しと並べられている。
客は全員が男性で、
どいつもこいつも目つきが悪く
ガラも悪そうだ。
つまり、キースのようなタイプの輩ばかりだ。
「何だか随分と胡散臭そうな店ですね。
とっととブツを売って、ずらかりましょう」
ガラの悪い態度でキースが
ボソリと口にする。
「そうね。同感だわ。
足がつく前に素早く交渉して立ち去りましょう」
するとキースが目を見開いて私を凝視した。
「何よ?」
「いえ……随分とガラの悪い台詞を
口にするなと思って」
「お互い様でしょ。
それじゃ、早速行くわよ」
「いいですか? 交渉は俺がします。
姫はバレないようにフードを
深く被っていてください」
「はいはい」
私は言われた通りフードを目深に被り、
キースの後に続いて店の奥へ向かった。
カウンターの奥にいたのは、
五十代ほどの強面の男性だった。
右目に黒い眼帯、
頬には切り傷の跡がある。
……もしや、若い頃は百戦錬磨の
手練れだったのかもしれない。
「いらっしゃいませ」
キースがカウンターに近づくと、
オーナーが低い声を出した。
「……これを換金して欲しい」
キースがポケットから赤いルビーを取り出し、
ゴトリとカウンターに置く。
するとオーナーの左目がキラリと光った。
「……ほう。これは素晴らしい宝石ですな。
鑑定するまでもない」
「そうか。ならいくらで引き取ってくれる?
これだけ大きいのだから、
百万ジュエルくらいは出して
もらえるのだろうな」
カウンターに肩ひじを突くキース。
「百万ジュエルか。クックック……。
これはまた、えらく大きく出たものですな」
小さく肩を震わせるオーナー。
目つきの悪い男二人が、
カウンターでコソコソと話をしている。
何とも怪しい光景だわ。
「まぁいい、とりあえず鑑定してみるか。
ところでこのルビー、どこで手に入れた?」
オーナーがカウンターのランプに
明かりを灯しながら尋ねてきた。
「あ、そのルビーなら
道端に落ちていた石を……むごっ!」
突然キースが私を羽交い締めにし、
口を力いっぱい塞いできた。
「そ、それならこの間、
近くの鉱山で偶然見つけたものだ!」
「へぇ……鉱山ねぇ……」
オーナーがランプの光をルビーに向けた、
その瞬間。
――ピカッ!
突然、ルビーが激しく赤く輝き始めた。
「あら〜、きれいねぇ」
「一体どういう仕組みになっているんだ?」
キースと二人で感心しながら発光するルビーを見つめる。
すると、オーナーが青い顔でブルブルと震え始めた――


