クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
#11【先輩視点】「りんりん。今年もよろしく」——自然すぎた失言に、自分が一番動揺している
年末の業務量は、余計なことを考えずに済むという意味では都合が良かった。
リップクリームの一件で完全に許容量を超えた俺の脳は、とにかく仕事に意識を逃がすしかなかった。彼女との接触を最低限の事務連絡のみに抑え、ひたすら数字と資料に没頭する。
俺の不自然な回避行動に彼女が気づいていたかは分からないが、なんとか理性を保ったまま、俺は年末年始の長期休暇へと滑り込んだ。
だが——一人暮らしの静かな部屋で過ごす正月は、別の意味で地獄だった。
忙しさという麻酔が切れた途端、静まり返った部屋に彼女の笑顔が鮮明にフラッシュバックする。
ふと、どうしようもない不安が胸をよぎった。
(……あんなに周囲から好かれるタイプだ。そもそも、俺の知らないところで彼氏くらいいるんじゃないのか?)
クリスマスやこの年末年始の連休も、誰か特別な相手と過ごしているとしたら。
……いや、俺が彼女のプライベートを知らないだけで、いると考える方が自然だ。
想像すればするほど、真っ黒で名状しがたい感情が胸の奥で渦を巻く。考えたくないのに、頭から離れない。俺が「ただの上司」という立場を逸脱し始めている何よりの証拠だった。
リップクリームの一件で完全に許容量を超えた俺の脳は、とにかく仕事に意識を逃がすしかなかった。彼女との接触を最低限の事務連絡のみに抑え、ひたすら数字と資料に没頭する。
俺の不自然な回避行動に彼女が気づいていたかは分からないが、なんとか理性を保ったまま、俺は年末年始の長期休暇へと滑り込んだ。
だが——一人暮らしの静かな部屋で過ごす正月は、別の意味で地獄だった。
忙しさという麻酔が切れた途端、静まり返った部屋に彼女の笑顔が鮮明にフラッシュバックする。
ふと、どうしようもない不安が胸をよぎった。
(……あんなに周囲から好かれるタイプだ。そもそも、俺の知らないところで彼氏くらいいるんじゃないのか?)
クリスマスやこの年末年始の連休も、誰か特別な相手と過ごしているとしたら。
……いや、俺が彼女のプライベートを知らないだけで、いると考える方が自然だ。
想像すればするほど、真っ黒で名状しがたい感情が胸の奥で渦を巻く。考えたくないのに、頭から離れない。俺が「ただの上司」という立場を逸脱し始めている何よりの証拠だった。