クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
ネクタイを緩め、ポケットからカッターを取り出しながら現れた部長を見て、彼女は目を丸くして固まっていた。
「ぶっ部長……! 申し訳ありません、こんな時間に……」
「いいんだよ御空くん! 私を会議ばかりしてる上司と思ってたら大間違いだ。私の指先は、まだアナログ時代のカッターの感触を覚えてるんだからな!」
営業部から企画部まで、いくつものデスクを繋げた特設の作業スペース。
さっきまで俺を叱りつけていた部長がデスクに腰を据え、ものすごい手つきでラベル紙を裁断し始める。俺もその隣ですぐさま作業を開始する。
「……ほう、さすがだな主任。だが、角の落とし方が甘いぞ!」
「部長、今はスピード重視です。講釈はいいですから手を動かしてください」
「ハッハッハッ!お前も言うようになったな!それにしても昔を思い出す。こんなこと日常茶飯事だったぞ!」
「…部長、手が止まってます」
「へーへー!怖い怖い!」
俺の遠慮のない物言いに、初めは青ざめていた彼女たちSNSユニットのメンバーから、次第にクスクスと笑い声が漏れ始めた。
(……よかった)
手を動かしながら横目で彼女を見ると、さっきまでの絶望は消え、真剣ながらもどこか余裕を感じる表情で作業に没頭していた。
ミスへの恐怖で縮こまっていた彼女の心を、この深夜の奇妙な連帯感が解きほぐしてくれたらしい。
俺はカッターを滑らせながら、この騒がしくて泥臭い、熱を帯びた空気を心地よく感じている自分に気づいていた。
「ぶっ部長……! 申し訳ありません、こんな時間に……」
「いいんだよ御空くん! 私を会議ばかりしてる上司と思ってたら大間違いだ。私の指先は、まだアナログ時代のカッターの感触を覚えてるんだからな!」
営業部から企画部まで、いくつものデスクを繋げた特設の作業スペース。
さっきまで俺を叱りつけていた部長がデスクに腰を据え、ものすごい手つきでラベル紙を裁断し始める。俺もその隣ですぐさま作業を開始する。
「……ほう、さすがだな主任。だが、角の落とし方が甘いぞ!」
「部長、今はスピード重視です。講釈はいいですから手を動かしてください」
「ハッハッハッ!お前も言うようになったな!それにしても昔を思い出す。こんなこと日常茶飯事だったぞ!」
「…部長、手が止まってます」
「へーへー!怖い怖い!」
俺の遠慮のない物言いに、初めは青ざめていた彼女たちSNSユニットのメンバーから、次第にクスクスと笑い声が漏れ始めた。
(……よかった)
手を動かしながら横目で彼女を見ると、さっきまでの絶望は消え、真剣ながらもどこか余裕を感じる表情で作業に没頭していた。
ミスへの恐怖で縮こまっていた彼女の心を、この深夜の奇妙な連帯感が解きほぐしてくれたらしい。
俺はカッターを滑らせながら、この騒がしくて泥臭い、熱を帯びた空気を心地よく感じている自分に気づいていた。