クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
その日の定例会議は、いつもより長引いた。
白熱した議論がようやく終わり、メンバーがぞろぞろと退出していく。
私も資料をまとめながら立ち上がり、隣を見た。

先輩がまだ座っている。
手元のノートに視線を落としたまま、動く気配がなかった。

「……先輩、行かないんですか?」
「あ、ああ。……今行く」

先輩がゆっくりと顔を上げた。
それから、何かを確認するように、じっと私の目を見た。

「……今日の会議。りんりんのプレゼン、すごく良かった」
「え……ありがとうございます」

思いがけないストレートな褒め言葉に、私は少しだけ頬が熱くなった。
彼が仕事の場で、こんな風に直接「良かった」と口にするのは珍しい。

「みんな、りんりんの話になると前のめりになるんだよな」
先輩が、どこか遠くを見るような、独り言に近い声で続けた。

「気づいてるか? 君が喋り始めると、会議室の空気が変わる」
「そんな、大げさですよ」
「大げさじゃない。……紛れもない事実だ」

先輩はノートをぱたんと閉じて立ち上がった。
そして、少しだけ顔を上げてぽつりと言った。
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