契約恋人のはずでしたが社長に溺愛されて離してもらえません
そこで一瞬、言葉を切った。

「基本的には、俺が終わらせる」

その一言に、なぜか胸の奥が引っかかる。

私は書類を見つめたまま、小さく息を吐いた。

「……承知しました」

そう答えながらも、これはただの“仕事”ではない——そんな予感だけが、静かに残っていた。

「少し時間を下さい」

書類から目を上げてそう言うと、社長はわずかに頷いた。

「ああ、いいだろう」

それだけだった。

引き止めることも、急かすこともない。

けれど——選ぶのは自分だと、突き放されたような感覚が残る。

そのまま業務を終え、帰宅する。

部屋に入ると、静けさがやけに重く感じた。

「……どうするの、私」

バッグを置いて、ソファに腰を下ろす。

テーブルの上に、さっきの契約書の内容が浮かぶ。
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