契約恋人のはずでしたが社長に溺愛されて離してもらえません
ふと浮かんだ考えに、眉を寄せる。

別の誰かが、その役を引き受けるのかもしれない。

そうなれば、社長の隣に立つのは自分ではない。

「……別に、関係ないでしょ」

即座に否定する。

それはあくまで仕事上の話であって、私の感情が入り込む余地なんてない。

それでも——。

「……嫌、なの?」

ぽつりと漏れた言葉に、自分で驚く。

すぐに首を振る。

「違う。ただ、面倒なだけ」

そう。ただの仕事。効率よく終わらせればいいだけ。

しばらく黙り込んだあと、私はゆっくりと息を吐いた。

「……やるしかないか」

決めた瞬間、不思議と迷いは消えていた。

——翌日。

「おはようございます」

いつも通り出社し、いつも通りの業務をこなす。

けれど、胸の奥にひとつだけ違和感が残っている。

「社長、少しお時間よろしいでしょうか」
< 14 / 30 >

この作品をシェア

pagetop