契約恋人のはずでしたが社長に溺愛されて離してもらえません
「このままでいい」

社長に低い声で言われ、私は息を飲んだ。

手を、繋いでいる。

人前で。しかもこんな自然に。

「……承知しました」

声が少しだけ硬くなるのを自覚する。

けれど、湊は気にする様子もなく、そのまま歩き出した。

「社長、そちらの方は?」

声をかけられ、足が止まる。

「ああ、私の恋人です」

迷いのない一言。

「……はじめまして、清水です」

私は軽く頭を下げた。

「そうでしたか。お似合いですね」

社交辞令のはずなのに、どこか本気の色が混ざっている。

その理由が、わかってしまう。

——距離が、近い。

挨拶を交わしている間も、手は離されない。

それどころか、ふとした瞬間に腰に手が回される。

「っ……」

思わず肩が強張る。
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