契約恋人のはずでしたが社長に溺愛されて離してもらえません
食事の間、仕事の話は一切出なかった。

代わりに、どうでもいいような日常の話が少しだけ続く。

「普段は、こんな店には来ないだろう」

「そうですね。あまり機会がないので」

「なら、慣れておけ」

「……必要ですか?」

「恋人なら、こういう時間もある」

淡々とした言い方。

けれど——。

「……そういうもの、なんですね」

私は小さく呟く。

食事を終え、再び車へ。

自宅前で車が止まる。

「ありがとうございました」

シートベルトを外しながら言う。

「明日も迎えに行く」

「……え?」

思わず顔を上げる。

「通勤も一緒だ」

「そこまで必要ですか?」

「不満か」

低く問われる。

「いえ……ただ」

言葉が続かない。

「契約中だ。徹底する」
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