契約恋人のはずでしたが社長に溺愛されて離してもらえません
それだけ言われてしまえば、もう何も言えない。

「……承知しました」

ドアを開け、車を降りる。

閉まる直前、ふと視線を感じて振り返る。

社長はまだこちらを見ていた。

——ただの契約のはずなのに。

送迎も、食事も。

どれもが、想像していた“恋人役”よりずっと深い。

「……これ、やりすぎじゃないの」

小さく呟いた言葉は、夜の空気に溶けて消えた。

翌日も甘い恋人関係は続いた。

「少し顔色が悪いな」

社長室に入った瞬間、社長にそう言われて足が止まる。

「……いつも通りです」

反射的に答えると、彼は小さく眉を寄せた。

「無理をするな」

「していません」

即答する。

それが当たり前だった。体調も感情も、仕事に持ち込まない。

「昼は取ったか」
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