契約恋人のはずでしたが社長に溺愛されて離してもらえません
否定しきれなかった。

「今日は早めに上がれ」

「ですが、まだ——」

「残りは俺が見る」

「それは困ります」

思わず強く言ってしまう。

「仕事ですから」

「だからだ」

視線が真っ直ぐに向けられる。

「おまえが倒れた方が、よほど困る」

その一言に、胸が小さく揺れた。

「……ありがとうございます」

こんなふうに言われることに、慣れていない。

優しくされる理由なんて、これまでなかったから。

「別に特別なことはしていない」

社長は淡々と言う。

「契約中の相手の体調を気にするのは当然だ」

——そう、これは契約。頭では理解しているのに。

「……優しすぎます」

気づけば、そんな言葉が零れていた。

「何がだ」

「……社長が」
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