契約恋人のはずでしたが社長に溺愛されて離してもらえません
会社のことを考えれば、合理的な判断なのかもしれない。

それでも——。

「何か、問題が?」

仕事として確認するように問いかける。

社長は一瞬だけ視線を外し、それから私を見た。

「我がままかもしれないが、どうしても愛のない結婚はしたくない」

その言葉に、少しだけ胸が揺れた。

「……社長が、そうお考えなら」

私はできるだけ感情を乗せないように返す。

「ですが、会社としての判断が優先される場面もあるかと」

「わかっている」

短く遮られる。

「わかっているが、それでも受け入れる気にはなれない」

その声音は静かだったが、はっきりとした意志があった。

私は一度、息を整える。

「では、お断りになる方向で調整を進めますか?」

あくまで秘書としての確認。
< 5 / 30 >

この作品をシェア

pagetop