契約恋人のはずでしたが社長に溺愛されて離してもらえません
だが、社長は首を横に振った。

「それでは角が立つ」

「では……時間を引き延ばす形で?」

「それも長くは持たない」

打つ手が限られていることは、私にも理解できた。

「……難しいですね」

思わず漏れた本音。

「だから、おまえに話している」

「私、ですか?」

意外で、わずかに目を見開く。

「ああ」

社長は真っ直ぐにこちらを見た。

その視線に、なぜか逃げ場がないような感覚を覚える。

「清水、おまえならどうする」

問われて、私は少しだけ考える。

感情ではなく、状況だけを整理する。

「……表向き、結婚の意思がない理由を作る必要がありますね」

「例えば?」

「すでに交際している相手がいる、など」

言いながら、現実的な案だと思った。

「なるほど」

社長は小さく頷く。
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