契約恋人のはずでしたが社長に溺愛されて離してもらえません
「その場合、先方も簡単には引かないでしょうが……時間は稼げるかと」

「時間、か」

彼はゆっくりと繰り返す。

そして——。

「悪くない」

ぽつりと呟いた。

その一言に、胸の奥がわずかにざわつく。

「では、その方向で——」

話をまとめようとした瞬間。

「清水」

再び名前を呼ばれる。

「はい」

顔を上げた私に、社長は静かに言った。

「その“交際相手”だが、おまえに頼むとしたら、どうする」

「……え?」

一瞬、意味が理解できなかった。

視線が絡む。逸らせない。

「もちろん、形式だけの話だ」

淡々とした口調。

けれどその言葉は、思っていた以上に重く響いた。
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