契約恋人のはずでしたが社長に溺愛されて離してもらえません
「私、ですか?」

言葉の意味をようやく理解して、私は眉をひそめた。

「それは現実的ではありません」

きっぱりと言う。

「なぜだ」

「私ではバレます。社長のこと、何も知りませんし」

事実だ。

表向きは秘書でも、プライベートまでは踏み込んでいない。

恋人役など、務まるはずがない。

「これから知ればいい」

あっさりと返されて、思わず言葉を失う。

「簡単におっしゃいますが……」

「難しいことは言っていない。必要なのは“それらしく見えること”だ」

「それでも、相手はお見合い相手の方ですよね。簡単に納得するとは思えません」

「だからこそ、説得力のある相手が必要だ」

まっすぐに見つめられる。

逃げ場がない。

「清水、おまえは適任だ」
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