恋が終わっても、人生は続いていく

第8話:問いかけ



「……私たちって、何?」



気づいたら、

言葉が出ていた。



夜。

いつもの部屋。

いつもの距離。



でも、

何もかもが違って感じる。





玲央は、

少しだけ動きを止めた。



「何って?」



軽い声。



まるで、

本当にわからないみたいに。





「……どういう関係なのかってこと」





自分で言って、

少しだけ苦しくなる。





(聞くつもりじゃなかったのに)





でも。



もう、

止められなかった。





「先輩と俺?」





「そう」





「……今のままじゃダメなんですか」





その返しに、

一瞬言葉を失う。





(今のまま……)





曖昧で。



不安定で。





でも。





「それって……」





言葉を探す。





「ちゃんとした関係じゃないでしょ」





やっと、

口に出す。





玲央は、

少しだけ視線を逸らした。





「ちゃんとって何ですか」





「……え?」





「付き合うとか、そういうやつ?」





軽い口調。





でも。



その言葉が、

やけに遠く感じる。





「……そうよ」





少しだけ、

強く言う。





「それが普通でしょ」







「俺、そういうの向いてないんで」





即答だった。





胸の奥が、

静かに崩れる。





(……やっぱり)





わかってた。





最初から。





この人は、

そういう人だって。





でも。





「……じゃあ、私は何なの」





声が、

少しだけ震える。





「都合のいい人?」





言ってしまった。





本当は、

言いたくなかったのに。





沈黙。





少しだけ、

長い間。





玲央は、

ゆっくりとこちらを見る。





「そう思うなら、そうなんじゃないですか」





その一言で、

全部が止まった。





(……何それ)





何も否定しない。



何も取り繕わない。





ただ、

受け入れるだけ。





(最低)





そう思うのに。





「でも」





ふいに、

続ける。





「先輩のこと、嫌いじゃないですよ」





その言葉に、

心が揺れる。





(そんなの……)





「むしろ、好きな方です」





軽く言う。





(やめて)





そういう言い方。





一番、

離れられなくなるやつ。





「……ちゃんとした好きじゃないでしょ」





絞り出すように言う。





「ちゃんとした好きって何ですか」





また、それ。





言葉を返せない。





「俺は、今の先輩との感じ、嫌いじゃないです」





「……私は嫌よ」





即答だった。





もう、

誤魔化せなかった。





「こんなの、嫌」





声が、

崩れる。





「不安になるし」





「他の人のことも気になるし」





「……私だけじゃないのも、わかってるし」





全部、

出てしまう。





止められなかった。





「それでも一緒にいるの、苦しい」







静寂。





玲央は、

何も言わなかった。





それが、

一番きつかった。





(何か言ってよ)





否定でもいい。



嘘でもいい。





何か、

欲しかった。





でも。





「……じゃあ、やめます?」





その一言。





軽すぎる。





まるで、

コンビニに行くかどうかみたいに。





(……終わるの?)





こんなに、

簡単に?





胸が、

ぎゅっと締まる。





「……」





言葉が出ない。





(やめるべき)





わかってる。





これ以上は、

無理だって。





でも。





「……やめない」





気づけば、

そう言っていた。





(……最低)





自分で思う。





でも。





「……ですよね」





玲央は、

少しだけ笑った。





その顔を見て。





(ああ)





完全に、

抜けられない。





そう、

理解した。
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