恋が終わっても、人生は続いていく

第11話:別れ

「話、ある」

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その一言を送るまでに、

どれくらい時間がかかっただろう。

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送信ボタンを押したあとも、

しばらく画面を見つめていた。

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(やっと、言えた)

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逃げてばかりだった。

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見ないふりして。

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わかってるのに、

続けて。

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でも。

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(もう無理)

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限界だった。

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既読は、

すぐについた。

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『いいですよ』

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あっさりした返事。

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(最後まで、これなんだ)

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苦笑が漏れる。

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夜。

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いつもの部屋。

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チャイムが鳴る。

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ドアを開ける。

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「どうも」

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いつもと同じ顔。

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そのことが、

少しだけ寂しい。

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「入って」

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短く言う。

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部屋に入る。

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沈黙。

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ソファに座る。

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向かい合う。

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距離は近いのに。

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もう、

前とは違う。

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「で、何ですか」

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軽い声。

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(最後まで、軽い)

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少しだけ、

笑いそうになる。

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「……もうやめよう」

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ゆっくり、

言葉にする。

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玲央が、

少しだけ目を細める。

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「何を」

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「この関係」

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はっきり言う。

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沈黙。

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少しだけ、

空気が止まる。

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「……そうですか」

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それだけだった。

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(やっぱり)

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引き止めない。

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当たり前だ。

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この人は、

そういう人だから。

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「昨日、見た」

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ふいに、

言葉が出る。

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「駅で」

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少しだけ、

間が空く。

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「……ああ」

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それだけ。

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否定もしない。

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言い訳もしない。

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(ほんとに……)

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「やっぱり、無理だった」

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小さく、

笑う。

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「わかってたのにね」

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最初から。

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「……先輩が選んだんじゃないですか」

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玲央が言う。

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その言葉に、

一瞬だけ、息が止まる。

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(……そう)

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その通りだ。

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全部、

自分で選んだ。

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「そうね」

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静かに頷く。

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「だから、終わりにする」

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責めるつもりは、

もうなかった。

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責めたところで、

意味がない。

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「……わかりました」

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あっさり。

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それだけで、

終わる。

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(こんなもんなんだ)

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この関係は。

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それでも。

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「……好きだった」

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ぽつりと、

こぼれる。

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玲央が、

少しだけこちらを見る。

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「今も、好きよ」

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正直に言う。

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隠しても、

仕方ないから。

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「でも」

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一度、

息を吸う。

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「好きだけじゃ、無理だった」

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それが、

全部だった。

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沈黙。

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少しだけ、

長い時間。

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玲央は、

何も言わなかった。

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それが、

この人らしい。

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「……じゃあ」

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立ち上がる。

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「帰るか」

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まるで、

いつも通りみたいに。

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その言葉に、

少しだけ笑う。

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「そうね」

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ドアの前。

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靴を履く。

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「じゃあ」

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玲央が、

軽く手を上げる。

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「元気で」

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「……ええ」

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それだけ。

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ドアが閉まる。

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音が、

静かに響く。

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一人になる。

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何も変わってない部屋。

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でも。

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もう、

あの人はいない。

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(終わった)

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ゆっくりと、

ソファに座る。

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涙は、

出なかった。

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ただ。

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(やっと、終わった)

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そう思った。

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でも。

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胸の奥に残っているものは、

消えなかった。

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それでも。

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前に進むためには、

これしかなかった。
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