恋が終わっても、人生は続いていく

第7話:本気になる



「今日、来れる?」



メッセージを打って、

送る前に手が止まる。



(……なんで私から)



前は、

向こうからだった。



誘うのも。



会うのも。





それが、

いつの間にか。





(私からになってる)





画面を見つめる。



消す?





(……やめよう)





そう思うのに。





送信。





(……はあ)





小さくため息をつく。





数秒後。





『行く』





短い返信。





それだけで、

胸が軽くなる。





(……ダメだ)





わかってる。





完全に、

おかしい。





でも。





(嬉しい)





その感情が、

止まらない。







部屋。





いつもの時間。





チャイムが鳴る。





ドアを開ける。





「どうも」





いつもと同じ顔。





でも。





(違う)





見る目が、

変わっている。





「入って」





自然に言う。





神崎が入る。





その瞬間。





(安心する)





胸の奥が、

ふっと緩む。





(なんで)





わかってるのに。





「今日、早かったな」





「うん」





それだけの会話。





でも。





その空気が、

心地いい。





「……なんかあったか」





ふいに聞かれる。





「え?」





「顔」





また、それ。





(この人ほんとに)





全部見てくる。





「……別に」





視線を逸らす。





でも。





「嘘だな」





即答。





(逃げられない)





「……ちょっと」





言葉を探す。





「会いたかっただけ」





言ってしまった。





(……は?)





自分で、

驚く。





こんなこと、

言うつもりじゃなかったのに。





神崎が、

少しだけ動きを止める。





「……そっか」





それだけ。





でも。





その声が、

少しだけ低くなる。





「俺も」





その一言。





(……え)





心臓が、

強く鳴る。





(今の……)





軽い言葉じゃない。





わかる。





「……やばいね」





小さく笑う。





「何が」





「全部」





苦笑する。





「こんなの、ダメでしょ」





わかってる。





言葉に出して、

確認するみたいに。





「ダメだな」





神崎も言う。





でも。





その距離は、

縮まる。





止まらない。





(止めなきゃ)





思うのに。





体が、

動かない。





「……やめる?」





最後の確認。





神崎が、

少しだけ間を置く。





「やめない」





はっきりと。





その答えで、

すべてが決まる。





(……ああ)





もう、

完全に戻れない。





そのまま、

引き寄せられる。





触れる。





昨日までと違う。





もっと、

深く。





もっと、

求めるように。





(……好き)





その言葉が、

頭の中に浮かぶ。





(ダメなのに)





完全に、

わかってるのに。





止められない。







夜。





隣にいる。





息が、

近い。





「……なあ」





神崎が、

低く呼ぶ。





「何」





「後悔してるか」





一瞬、

考える。





(後悔……)





答えは、

すぐに出た。





「してない」





はっきりと。





「……俺も」





その一言で。





さらに、

深く沈む。





(終わってる)





もう、

わかってる。





これは、

ただの関係じゃない。





「……好きになりそう」





ぽつりと、

こぼれる。





(言っちゃった)





神崎は、

少しだけ目を閉じた。





「もうなってるだろ」





その言葉。





否定できない。





「……うん」





小さく、

頷く。





それが、

すべてだった。
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