恋が終わっても、人生は続いていく

第9話:選択



「……終わった」



その一言を送ると、

すぐに既読がついた。





数秒後。





『会える?』





短いメッセージ。





(……やっぱり)





少しだけ、

胸が締まる。





『うん』





それだけ返す。







夜。





いつもの場所。





ドアを開ける。





「どうだった」





神崎が、

すぐに聞く。





「……離婚するって言った」





「そっか」





それだけ。





驚きも、

責めも、

ない。





ただ、

受け止めるだけ。





(この人は、そういう人)





それが、

少しだけ安心する。





「……怒られた」





小さく笑う。





「だろうな」





同じように、

少しだけ笑う。





「最低だって言われた」





「まあ、間違ってない」





その言葉に、

少しだけ肩の力が抜ける。





(否定しないんだ)





でも。





(それでいい)





わかってるから。





「……それでも、戻らない」





はっきり言う。





神崎が、

少しだけこちらを見る。





「本気だな」





「うん」





迷いは、

もうなかった。





(怖いけど)





でも。





(決めたから)







少しの沈黙。





そのあと。





「……じゃあ」





神崎が、

ゆっくり口を開く。





「こっち来るか」





「……え?」





意味が、

すぐにわからない。





「海外」





さらっと言う。





「向こうで仕事する話、前に言っただろ」





(……あ)





思い出す。





少し前に、

そんな話をしていた。





「本気で行くの?」





「行く」





迷いのない声。





「で」





少しだけ、

こちらを見る。





「一緒に来るなら、連れてく」





その言葉。





(……何それ)





頭が、

少しだけ真っ白になる。





「……私?」





「他に誰がいる」





当たり前みたいに言う。





でも。





(それって)





「……一緒に来るって」





言葉が続かない。





「一緒に住むってこと?」





「まあ、そうなるな」





軽い。





あまりにも、

軽い。





でも。





(人生、変わるよね)





全部。





仕事も。



生活も。





今までの自分も。





「……急すぎない?」





正直な言葉。





「そうか?」





「そうだよ」





苦笑する。





(この人は、いつもこう)





大事なことを、

軽く言う。





でも。





(それでも)





「……なんで、私?」





聞いてしまう。





神崎は、

少しだけ間を置いた。





「一緒にいたいから」





シンプルな答え。





(……それだけ?)





でも。





その言葉が、

一番響く。





(この人は、ちゃんと言う)





誤魔化さない。





変に飾らない。





それが、

好きだった。





(……どうするの)





問いかける。





これは、

ただの恋じゃない。





人生の選択。





愛を選ぶか。





それとも。





「……考えさせて」





それが、

精一杯だった。





神崎は、

すぐに頷いた。





「いいよ」





それだけ。





追い詰めない。





それも、

この人らしい。







帰り道。





一人で歩く。





頭の中が、

ぐるぐるしている。





(行く?)





(残る?)





答えは、

簡単じゃない。





(好き)





それは、

はっきりしてる。





でも。





(それだけで、いいの?)





自分に問う。





静かな夜。





その答えは、

まだ出なかった。
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